きんぼしのこころ


きんぼしの塩

 

30年前きんぼしを開店するにあたり、美味しい焼き鳥を出す為には、命となる塩を探すことが大事と塩探しが始まりました。市販の塩を片っ端から試しましたが、口の中に長く塩辛さが残るものが多く、塩が勝ってしまうため、串を何本も食べ続ける焼き鳥には不向きなものばかりでした。

欲しいのは「塩辛さが後に引かない、優しくてまろやかな塩、さらに自身の旨味で焼き鳥をおいしくしてくれる塩」。日本人がうまいと感じてくれる昆布、カツオの成分を塩に乗せることが出来たら、求めている塩になるのではないかと考え、試行錯誤の末出来上がったのがきんぼしの塩です。

日本人に馴染みの深い海水塩を天然自然素材の昆布、カツオの出汁の中に入れ、再度煮詰めてサラサラの塩にする手間のかかる作業の後に出来るこの塩は、思惑どおり、後に引かない角の取れた優しくまろやかな塩で、旨味調味料なしでも肉の旨味を何倍にも引き出してくれる焼き鳥に最適な塩に仕上がりました。


塩は熱くても手から落とす。

焼き鳥は鶏の色々な部位を使います。ねぎま、手羽先、かわ、なんこつ、砂肝、心臓、レバー、ぼんじり等など鶏の部位によって塩の感じ方が違います。それは脂の量、旨味の強さ、形状、カットの仕方、重さなど様々な要素が原因です。焼き台に何十本と載った違う部位の串一本一本に対し、経験に基づく感覚でそれぞれの最適な量を、微妙な調整が出来る人間の指先から直接落とします。これが焼き台前に立てるまで何年もかかる所以です。


炭は生き物

炭は生き物と同じように、時間の経過とともに火付き始め、ピーク、焼け細り、灰へと変化します。同時に着火した炭も、太さ、硬さ、乾燥度などで燃え方も違います。これら千差万別の炭を継ぎ足しながら焼き台を最高の状態で何時間もキープさせ、尚且つその中で強火、弱火を作るのも経験の賜物です。


串を丁寧にさす。仕込みで大半が決まる。

毎日数千本刺す串でもお客様にとっては一期一会の串。最高に美味しい焼き鳥をお出しするには、形も揃えて丁寧に刺す事が大事。目方に気をつけ、あちこち波打たないように刺し、全部長さも揃える。その結果一番大事な”同じ厚み”の串が仕上がる。同じ厚みで仕上がらないと、一本の串でレアとウエルダンが出来てしまうし、塩感も違ってしまいます。焼く前の串たちが美しく揃ってないとおいしい焼き鳥は焼けません。


おいしく食べてもらう為のひと手間ひと工夫

きんぼしでは料理以外でもおいしく食べていただく気遣いをしています。

当たり前ですが、熱いものはあたたかいうちが一番おいしい。だから盛り合わせはやらず、一品ずつお皿に乗せてそれぞれの人が取りやすい位置にお出しします。フォアグラ大根などは、中とろとろのフォアグラと柔らかく炊いた大根が同じ食感という事がこの料理のポイントなので、ピンチョス串を使って口の中で同時に味わってもらえる出し方でお出します。また地元美濃焼の名窯玉山窯の織部皿をメインで使い、視覚的にもおいしく見えるようお出ししています。


焼き鳥屋でも料理を楽しんでいただく事を目指して

焼き鳥は本来季節感の乏しい料理。四季のある日本で生まれて、焼き鳥屋でも季節感を楽しんでもらいたいという想いから、春は竹の子、ハマグリ、そら豆、夏はマンゴー、ナス、茶豆、秋は松茸、銀杏、ポルチーニ、冬は鴨、牡蠣、長芋、など季節の食材を使った一品をお出ししています。

また焼き鳥だけでなくフレンチやイタリアンレストランで食べるようなものを焼き鳥屋の出し方で気軽に食べていただけます。名物となった子羊香草焼き、フォアグラマンゴー、フォアグラ大根、ホタテの舌平目巻き、特製バルサミコソースを使ったトマトサラダ、つくねバーガーなど意外性のあるメニューで楽しんでいただけます。

 


きんぼしの焼鳥をより美味しく召し上がって頂くには

焼き鳥は串にかぶりつくのが美味しい食べ方です。女性の方も恥ずかしがらずに豪快に召し上がって下さい。(根元のところが食べにくくなったら、箸で先の方に動かして食べて下さい。)

 きんぼしではこの食べ方で美味しくなるよう、一本一本、心を込めて刺しています。

例えば「せせり」の場合、脂身の部位と締まった部位を交互に刺し、トップに一番美味しい部位を刺しています。何人かで食べる時に、串から抜いてお皿にバラしてお箸で食べるのは美味しさが半減してしまいます。熱々のうちにお一人様一本ずつ食べて頂いた方が、皆様が美味しくお召し上がりになれます。

 

別メニューの季節の一品料理から一、二品頼んで頂くと、お料理のバランスとお出しするタイミングが良くなるかと思います。是非一度お試し下さい。